2. 副腎

1. 副腎の解剖

副腎は充実性臓器です。ホルモンを産生する機能があります。腎上端に接しており、脂肪組織とゲロタ筋膜で包まれています。重さは4から5gで少なくとも6g未満です。長さは4から6cm、幅は2から3cmです。形態には左右差があり、上から見ると右側は三角形で左側は三日月状をしています。長軸に沿って三等分して内側から頭部、体部、尾部に分けられます。割面では辺縁にある黄色の皮質と中心部にある淡褐色から灰色の髄質が認められます。皮質は外側に突出していたり、周囲脂肪織に遊離して存在することがあります。髄質は頭部と体部にのみ存在するため、尾部に見られれば髄質過形成と言えます。
副腎には3本の副腎動脈が入ります。静脈で髄質を通る比較的大型の血管は周囲を皮質で囲まれているため割面でよく目立ちます。これらの血管は最終的に合流して1本の副腎静脈となり、頭部の下側から出ます。
米対がん合同委員会(AJCC)のTNM分類第7版では傍大動脈リンパ節と後腹膜リンパ節が所属リンパ節となります。

2. 副腎腫瘍の肉眼的分類(副腎腫瘍取扱い規約第2版)

副腎腫瘍取扱い規約第2版には皮質癌および神経芽腫に関する分類が記載されています。

(皮質癌)
T1: 5cm以下、浸潤なし
T2: 5cmより上、浸潤なし
T3: 局所浸潤あり、隣接臓器進展なし
T4: 隣接臓器進展あり

(神経芽腫)
病期1: 肉眼的に全摘された限局性腫瘍で顕微鏡的な残存腫瘍の有無は問わない(原発腫瘍摘出時に浸潤のあるリンパ節が取れているかもしれないが)。同側リンパ節には顕微鏡的浸潤なし。
病期2A: 不完全摘出の限局性腫瘍で、同側の離れた部位のリンパ節には顕微鏡的浸潤なし。
病期2B: 限局性腫瘍で同側の離れた部位のリンパ節には顕微鏡的浸潤あり。対側リンパ節にはなし。
病期3: 局所リンパ節の転移の有無にかかわらず正中を越え摘出不能な腫瘍か、対側リンパ節転移のある限局性腫瘍。あるいは摘出できない両側性の正中の腫瘍でリンパ節浸潤あり。
病期4: 原発腫瘍の状態にかかわらず、遠隔リンパ節、骨、骨髄、肝、皮膚やその他の臓器に転移がある。ただし、4S例は除く。
病期4S: 限局性腫瘍(1, 2A, 2Bに相当)で皮膚、肝、骨髄のみ転移がある。1歳以下に限る。

 

3. 副腎の検体

腫瘍がホルモンを産生する場合は症状を取り除くために副腎摘除術が行われます。症状のない偶然見つかった腫瘍でも大きさが4から6cmを越える場合は皮質癌の可能性があるため手術されます。
副腎原発の腫瘍が広がることを防ぐため生検が行われないことが多いようです。通常、確定診断は手術検体によって行われます。術前に化学療法を行う場合は生検が実施されます。
副腎摘除術には大きく切開する手術と腹腔鏡を用いる手術があります。皮質癌では副腎外に浸潤していたり、副腎静脈に腫瘍塞栓が認められた場合は大きく切開され摘出されます。
皮質癌が疑われた場合に後腹膜リンパ節が郭清されることがあります。

 

4. 副腎腫瘍の切りだし

1) 名前とIDの確認
2) オリエンテーション
副腎静脈が出ているのが内側でかつ下側です。
3) 計測と肉眼所見の記載
(1) 検体が脂肪組織に包まれているか確認します。皮質癌再発例の約1/4で術中に腫瘍の損傷があったとの文献があります。神経芽腫では遺伝子検査のために腫瘍の一部を切り取ることがあります。
(2) 重量を測定します。検体が50gより軽ければほぼ良性、100gを越えるとほぼ悪性と言われています。より正確に重量を測定するには副腎周囲の脂肪織をていねいに取り除く必要がありますが、人工的に腫瘍を露出させてしまう危険性があります。
(3) 割面で腫瘍の数、腫瘍径を計測します。長径6.5cmを越えると悪性の可能性が高いと言われています。
(4) 腫瘍にもろい黄色調の壊死を思わせる部分がないか確認します。壊死は悪性(皮質癌あるいは悪性褐色細胞腫)を考える基準となることがあります。
4) マーキング
周囲脂肪組織にインクを塗ります。
5) サンプリング
(1) 短軸に沿って厚さ3mmでスライスします。割面の写真を撮影します。
(2) 原則的に腫瘍の最大割面を全て切片にします。あるいは、2cmより下なら全て作製し、2cmより上なら3ブロック作製し、1cm増加するごとに1ブロック追加する方法もあります。いずれであっても以下の部分が含まれるようにします。
① 壊死や出血があればその周囲
② 腫瘍被膜
③ 腫瘍と非腫瘍との境界部
④ 肉眼的所見の異なる部分
(3) 血管侵襲は悪性を考える基準となることがあります。割面で副腎静脈への侵襲あるいは腫瘍塞栓が認められないか確認し、あれば作製します。短軸でスライスしておくと副腎静脈が輪切りになり、観察しやすくなります。
(4) 腫瘍から離れた残存皮質・髄質を作製します。

副腎原発の腫瘍で悪性とされるのは皮質癌、悪性褐色細胞腫と小児に発生する神経芽腫です。
皮質癌であればミトタン内服が考慮されます。
悪性褐色細胞腫であれば転移巣の切除あるいは交感神経受容体遮断薬、カテコラミン合成阻害薬が用いられることがあります。
神経芽腫は病期、年齢、組織分類、MYCN遺伝子増幅、染色体数からリスク分類を行い、化学療法や放射線療法が検討されます。

 

5. 肉眼像と切り出しの実際
(写真は草津総合病院 山本喜啓先生と近江八幡市立総合医療センター  細川洋平先生のご厚意による)

右副腎皮質腺腫