2. 精巣

1. 精巣の解剖

精巣は充実性の臓器です。左右一対存在します。精子を成熟させたり、ホルモンを産生する機能があります。長径は4-5cmです。白く厚い白膜で包まれています。精巣の後外側には精巣上体が付着しており、その部分を精巣門または精巣縦隔と呼びます。白膜は精巣中隔となって精巣門から放射状に精巣内へ伸び、精巣を200から300の円錐状に区切ります。区切られた中には1本から数本の糸状の精細管が密に折りたたまれて詰まっています。精細管は精巣門で癒合して網目状の構造を形成しています(精巣網)。最終的に12から20本の管となって白膜を貫き、少量の脂肪組織を通り、精巣上体の先端に入ります。そして精巣上体の反対側から一本の精管となり出ていきます。精巣と精巣上体は本来、腹腔内にある臓器が飛び出たものです。精巣本体とそれを包む組織との間の狭い空間は腹腔の名残です。空間内で精巣は後外側にある精巣上体付着部と下側にある索状組織で固定されています。空間の内面はかつて腹膜であった精巣鞘膜で覆われます。さらに外側は順に内精筋膜、精巣挙筋、外精筋膜、肉様膜となっています。それぞれ腹壁の横筋筋膜、内腹斜筋、外腹斜筋筋膜、皮下組織が引き伸ばされたものです。最後は皮膚で覆われます。精巣上体を出た精管は外精筋膜で包まれながら腹壁へ向かいます。この管状の構造が精索です。精索内を精巣動静脈が通ります。また、肉様膜と皮膚を合わせて陰嚢壁と呼びます。

所属リンパ節は大動脈あるいは大静脈の周りにあるリンパ節です(腹部傍大動脈、大動脈前、大動静脈間、大静脈前、傍大静脈、大静脈後、大動脈後)。精腺静脈に沿ったリンパ節も含まれます。また、陰嚢または鼠径部の外科手術の既往がありますとリンパ液の流れが変わるため、骨盤内リンパ節および鼠径部リンパ節も所属リンパ節となります。

2. 精巣胚細胞腫瘍の肉眼的分類(精巣腫瘍取扱い規約第3版)

精巣にできるしこりの90%以上は胚細胞腫瘍です。精巣胚細胞腫瘍の肉眼的分類の特徴は腫瘍の大きさだけでなく、脈管侵襲がT分類に組み込まれていることです。

pTX: 原発腫瘍の評価が不可能(根治的精巣摘出術が行われなかった場合)
pT0: 原発腫瘍を認めない(たとえば精巣における組織学的瘢痕)
pTis: 精細管内胚細胞腫瘍(上皮内癌)
pT1: 脈管侵襲を伴わない精巣および精巣上体に限局する腫瘍。浸潤は白膜までで鞘膜には浸潤していない腫瘍
pT2: 脈管侵襲を伴う精巣および精巣上体に限局する腫瘍。または白膜をこえて鞘膜に進展する腫瘍
pT3: 脈管侵襲には関係なく精索に浸潤する腫瘍
pT4: 脈管侵襲には関係なく陰嚢壁に浸潤する腫瘍


3. 精巣の検体

精巣胚細胞腫瘍は大きくセミノーマと非セミノーマ(絨毛癌や卵黄嚢腫瘍など)に分けられます。精巣は腫瘍細胞が睾丸内に広がるのを防ぐために生検を行いません。確定診断は手術検体によって行われます。遠隔転移が存在していても手術が行われます。
精巣腫瘍に対する標準術式は高位精巣摘除術です。鼠径部を切開して精索を切断し、精巣を抜き取ります。検体は内精筋膜で覆われています。
固定液は白膜を浸透しにくいため、必ず精巣を長軸に沿った最大割面で切開してから固定します。


4. 精巣の切り出し

1) 名前とIDの確認
血液検査を確認します。b-hCGが高値の場合は絨毛癌、AFPの値が高ければ卵黄嚢腫瘍が存在する可能性があります。
2) オリエンテーション
精巣上体の先端が精巣の上部にあり、そこから精巣の外側に走行して出て行きます。下端には精巣を固定する索状組織を切除した部分があります。
3) 計測と肉眼所見の記載
通常は 固定のために精巣の長軸に沿った最大割面で切開されています。腫瘍径を測定します。
4) マーキング
5) サンプリング
(1) 最初に精索断端、精管断端を切り取るとコンタミネーションの可能性を低くするとことができます。精管は動静脈とは別に結紮されるため、断端の近傍から飛び出た細い管として認められます。
(2) 切開された最大割面に直交するよう5mmごとに水平断にします。
(3) 10ブロックを目安に切り出します。腫瘍が10ブロック以内に収まれば全て作製します。腫瘍の長径が10cm以上の場合は1cmあたり1個追加します。
① 肉眼像が異なる部分を切り出します。壊死や出血が見られると絨毛癌の可能性があるためブロックにします。一部でも非セミノーマの組織があれば非セミノーマとして治療されます。可能な限り白膜を含めます。
② 白膜、鞘膜、精索、精巣上体への浸潤を確認し、あれば切り出します。精巣上体への浸潤は精巣門で起こりやすいと言われています。悪性リンパ腫では約半数が精巣上体あるいは精索に浸潤しているとの文献があります。
③ 周囲精巣との境界部を切り出します。
③ 非腫瘍部を切り出します。精巣上体、精巣門の脂肪組織、精巣網、白膜を含む精巣を切り出します。精索も作製します。
④ もし、リンパ節が付着していれば提出します。
(5) 別ビンでリンパ節が提出されていれば個数を数えます。精巣の腫瘍ではリンパ節転移の程度を表すN因子は転移巣の大きさと個数で分類されます。大きさが2cmをこえるリンパ節は割を入れて、転移を思わせる白色部分があればその長径を測定して下さい。転移の大きさが2cmをこえるとpN2, 6cmをこえるとpN3となります。
(6) 検鏡後、b-hCGやAFPが高値にも関わらず、絨毛癌や卵黄嚢腫瘍など原因と考えられる組織が見つからない場合はさらに腫瘍を切り出します。

リンパ節転移が存在していた場合は放射線療法や化学療法が行われます。セミノーマで腫瘍径が4cm以上あるいは精巣網に浸潤していた場合に放射線療法あるいは化学療法が検討されることがあります。非セミノーマでは脈管侵襲がある場合に化学療法が考慮されます。

5. 肉眼像と切り出しの実際

セミノーマ