3. 大腸

1. 大腸の解剖

大腸は管状の臓器です。回盲弁という二枚のひだから始まり、肛門周囲皮膚で終わります。大腸癌取扱い規約(第8版)では腸管の走向や画像所見などに基づいて以下のような8領域に分けます。

(結腸)
C: 盲腸 嚢状部分です。回盲弁の上のひだより尾側を指します。回盲弁そのものは盲腸に含みます。
〔附〕虫垂(V)
A: 上行結腸 回盲弁の上のひだ~右結腸曲。
T: 横行結腸 右結腸曲~左結腸曲。
D: 下行結腸 左結腸曲~腸骨稜。
S:  S状結腸 腸骨稜~岬角。

(直腸)
RS: 直腸S状部 岬角~第2仙椎下縁。
R: 直腸
Ra: 上部直腸 第2仙椎下縁~腹膜反転部。
Rb: 下部直腸 腹膜反転部~恥骨直腸筋付着部上縁
〔附〕
肛門管(P): 恥骨直腸筋付着部上縁~肛門周囲皮膚との移行部
肛門周囲皮膚(E)

2. 大腸癌の肉眼的分類

基本分類
0型 表在型: 癌が粘膜下層までにとどまる場合に多く見られる肉眼形態
1型 腫瘤型: 明らかに膨隆した形態を示し周囲粘膜との境界が明瞭なもの
2型 潰瘍限局型: 潰瘍を形成し、潰瘍を取り巻く大腸壁が肥厚し周囲粘膜との境界が比較的明瞭な周堤を形成する
3型 潰瘍浸潤型: 潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく大腸壁が肥厚し周囲粘膜との境界が不明瞭な周堤を形成する。
4型 びまん浸潤型: 著明な潰瘍形成も周堤もなく、大腸壁の肥厚・硬化を特徴とし病巣と周囲粘膜との境界が不明
5型 分類不能: 上記0~4型のいずれにも分類し難いもの

0型(表在型)の亜分類
0-I 隆起型: 明らかな腫瘤状の隆起が認められるもの
0-II 表面型: 隆起や陥凹が軽微なもの、あるいはほとんど認められないもの
0-IIa 表面隆起型: 表面型であるが、低い隆起が認められるもの
0-IIb 表面平坦型: 正常粘膜にみられる凹凸を越える程の隆起陥凹が認められないもの
0-IIc 表面陥凹型: わずかなびらん、または粘膜の浅い陥凹が認められるもの

大腸癌は胃癌と異なり、0-III 陥凹型の定義はありません。

3. 壁深達度(大腸壁のどの層まで達しているか)

大腸壁の断面は粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜からなります。ただし上行結腸、下行結腸、上部直腸の一部および下部直腸、肛門管の全周は漿膜を有しません。盲腸も漿膜を有しないことがあります

Tis(M): 癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない。
T1(SM): 癌が粘膜下層までにとどまり、固有筋層に及んでいない。
T2(MP): 癌が固有筋層までにとどまり、これを越えていない。

漿膜を有する部位
T3(SS): 癌が固有筋層を越えて浸潤しているが、漿膜表面に露出していない。
T4a(SE): 癌が漿膜表面に露出している。
T4b(SI): 癌が直接他臓器に浸潤している。

漿膜を有しない部位
T3(A): 癌が固有筋層を越えて浸潤している。
T4b(AI): 癌が直接他臓器に浸潤している。
(大腸癌取扱い規約第8版)

※粘膜下層浸潤癌(SM癌)の浸潤距離について
内視鏡的摘除標本において、SM癌の浸潤距離は腸切除を考慮する要素の一つです。基本的に粘膜筋板が明瞭であればそこから測定し、消失があれば表面から測定します(図の左2つ)。例外的に有茎性(Ip)ポリープでかつ粘膜筋板が樹枝状に増生している場合(粘膜筋板錯綜例)は、頭部と頚部に基準線を引いて、距離を測定します(図右端)。基準線に達していない場合はhead invasionと呼び、浸潤距離0μmとみなします(図右から2つめ)。

4.  切り出し

1) 名前とIDの確認
2) オリエンテーション
口側、肛門側断端を確認し、切除検体のオリエンテーションをつけます。申込書にイラストがあれば参考にしましょう。わかりにくい場合には提出医に確認しましょう。
3) 計測と肉眼所見の記載
(1) 断端と腫瘍を結ぶ最も短い距離を記載します。結腸癌は通常、腫瘍から10cmあるいは支配動脈から5cmの部位で切除されています。直腸S状部癌、直腸上部癌では通常、肛門側断端から3cm、直腸下部癌では2cmの部位で切除されます。
(2) 腫瘍径を記載します。
(3) 検体を裏返して漿膜面、外科剥離面への露出がないか確認してください。漿膜面は断端ではありません。露出していても必ずしも体内に癌が残っているとは言えません。
上行結腸、下行結腸、上部直腸は漿膜で覆われていない部分(外科剥離面:RM)があり、その部分は断端となります。
下部直腸、肛門管には漿膜がないため、全周が断端となります。下部直腸および肛門管を切除した検体(腹会陰式直腸切断術)では裏返して観察すると、遠位側に凹みを認める場合があります。この部分は直腸を取り巻く脂肪層(直腸間膜)の薄い部分(恥骨直腸筋付着部)です。この部分は断端が陽性のことがありますので、よく観察しましょう。
横行結腸、S状結腸では癒着がない限り、断端は腸間膜の根部となります。ただし、腸間膜はリンパ節検索のために切り取られていることが多く、通常提出された検体中に剥離断端はありません。
盲腸は外科剥離面がある場合も、腸間膜根部のみが断端の場合も両方あります。
4) マーキング
漿膜で覆われていない部分(外科剥離面:RM)にインクを塗ります。わかりにくい場合は提出医に依頼しましょう。
5) サンプリング
(1) 最初に断端を切り取るとコンタミネーションの可能性を低くするとことができます。
(2) 原則として全腫瘍部に腸管の縦軸に沿う方向で割を加えて深達度、外科剥離面を観察します。腸管が狭窄していると輪切りにしたほうがわかりやすいです。割の幅は大腸癌取り扱い規約第8版の推奨では早期癌で小さい病変や粘膜下層浸潤ないしそれが疑われる部で2mm幅、20mm以上の大きい病変で全体が粘膜内癌と判断される場合は3~4mm幅です。最深部および外科剥離面に最も近接している部分を提出します。
(3) 併存ポリープがあれば切り出します。
(4) 別ビンにリンパ節(通常、200番台3桁の数字が記載されています)が提出されていた場合は個数を数えてください。郭清リンパ節の個数が多いほど予後が良いという報告があります。リンパ節は通常執刀医が提出前に切り取りますが、腸管傍リンパ節は腫瘍が直上にあると完全に切り取らないため、残っている場合があります。割面に見られたら提出して下さい。大腸癌取り扱い規約第8版では、リンパ節構造のない癌巣が筋層外脂肪織内に見られた場合も記載が必要ですので切り出して下さい。脈管/神経侵襲病巣以外はリンパ節転移として扱われます。領域リンパ節以外のリンパ節への転移は遠隔転移(M1)となります。
(5) 回盲部切除術などでは虫垂が存在するので探して提出して下さい。回盲弁近傍の癌であると虫垂内腔への進展か直接浸潤か分かりにくい場合があります。

リンパ節転移があった場合は化学療法が検討されます。固有筋層を越えていたり、リンパ節転移があったり、切除断端が陽性あるいは近接していた場合は放射線療法が検討されます。切除断端陽性であれば追加切除が行われることがあります。

5.  肉眼像と切り出しの実際

表在型(IIa型)

進行癌(1型:隆起型)

進行癌(3型:潰瘍浸潤型)

進行癌(4型:びまん浸潤型)

6. 腸管のその他の病変

1) イレウス
断端に虚血性変化があると吻合部の狭窄につながります。必ず切り出して組織学的に確認しましょう。
2) 炎症性腸疾患
クローン病では肉眼的に断端から1cm以内にアフタ性潰瘍があると100%再発すると言われていますのでよく観察して下さい。クローン病、潰瘍性大腸炎のいずれも癌を合併している可能性がありますが、粘膜のびらん・潰瘍によってわかりにくい場合があります。リンパ節をよく検索して下さい。
3) 虫垂炎
(1)  粘膜面を観察し、びらんや潰瘍の存在する部分を切り出します。漿膜面に炎症が及ぶと混濁した灰白色を呈し、白色調の付着物が見られることがあります。穿孔の有無を確認し、あれば切り出します。
(2) 粘膜面が淡赤色(固定後なら褐色)均一で明らかな炎症像がない場合は抗生物質投与後かもしれませんが、憩室症の場合もあるので、輪切りにして割面をよく観察します。また、粘膜に著変がないにも関わらず漿膜面に白色調の付着物がある場合は卵管炎などの可能性も考えられます。
(3) 口側断端、虫垂先端を切り出します。虫垂先端には偶発的に神経腫やカルチノイドが見つかることがあります。