2. 唾液腺 (頭頚部)

1. 唾液腺の解剖

唾液腺は唾液を産生する充実性臓器です。唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に分けられます。大唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺があり、左右一対ずつ存在します。
1) 耳下腺は逆三角形をしており、大きさは上下で6cm程度、前後で3cm程度です。線維性被膜を有します。顔の表情を支配する顔面神経が通っており、それより皮膚側を浅葉、深部側を深葉と呼びます。耳下腺管を介して唾液腺を分泌します。約20個のリンパ節が耳下腺内に存在すると言われています。
2) 顎下腺の大きさは耳下腺の約半分です。線維性被膜を有します。顔面動脈が貫いています。顎下腺管を介して唾液腺を分泌します。腺内にリンパ節はありませんが、付着するように3-4個のリンパ節(顎下リンパ節)が存在します。
3) 最も小さいのが舌下腺です。線維性被膜を有しません。導管は約10本ほどです。口腔底に開口したり、顎下腺管に分泌したりします。

口腔内には500から1000個の小唾液腺が多数存在します。大きさは1-5mmです。小唾液腺由来の癌は口腔原発の癌として取り扱われます。

 

2. 唾液腺の検体

手術は腫瘍の組織によって異なります。腫瘍の組織は吸引細胞診などで術前に診断がついていることもありますが、術中迅速診断が行われた場合、検体の一部は切り取られていることがあります。
1) 耳下腺
唾液腺腫瘍の大部分は耳下腺浅葉に発生し、その多くは良性腫瘍です。部分切除、葉切除、全摘術、拡大全摘術が行われます。良性腫瘍の多くは多形腺腫ですが、この腫瘍は被膜外進展を示し、切除断端が陽性であると再発するため、周囲唾液腺をつけてやや広めに切除されます。次に多いワルチン腫瘍では核出術を行います。癌の場合は低悪性度癌(腺房細胞癌など)か高悪性度癌(扁平上皮癌、導管癌、高悪性度粘表皮癌など)かによって手術が異なります。浅葉の低悪性度癌では浅葉切除を行います。大きな腫瘍では部分的に深葉を切除することもあります。高悪性度癌、深葉の低悪性度癌では全摘手術が行われます。
2) 顎下腺
顎下腺に発生する腫瘍は悪性のものが多いです。良性腫瘍であれば全摘術を行い、線維性被膜で包まれた状態で提出されます。もし、被膜がない場合は肥満や炎症性癒着によって線維性被膜の周囲で剥離できなかった可能性があります。悪性腫瘍であれば全摘術と顎下リンパ節切除が行われます。
3) 舌下腺
舌下腺に腫瘍が発生することは稀です。悪性腫瘍が多いですが、口腔内の小唾液腺に発生したものと区別が困難です。悪性腫瘍に対して拡大切除と頚部郭清が行われます。

 

3. 唾液腺癌の肉眼的分類 (頭頚部癌取扱い規約改訂第5版)

TX: 原発腫瘍の評価が不可能
T0: 原発腫瘍を認めない
T1: 最大径が 2 cm 以下の腫瘍で,実質外進展*なし
T2: 最大径が 2 cm をこえるが 4 cm 以下の腫瘍で,実質外進展 *なし
T3: 最大径が 4 cm をこえる腫瘍,および / または実質外進展*を伴う腫瘍
T4a: 皮膚,下顎骨,外耳道,および/または顔面神経に浸潤する腫瘍
T4b: 頭蓋底,および/または翼状突起に浸潤する腫瘍,または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*実質外進展とは臨床的または肉眼的に軟部組織または神経に浸潤しているものをいう。ただし,T4a および T4bに定義された組織への浸潤は除く。顕微鏡的証拠のみでは臨床分類上,実質外進展とはならない。

 

4. 唾液腺の切り出し

1) IDと名前の確認

2) オリエンテーション
耳下腺では耳下腺管が切除されている場合はその部分が前方です。顎下腺では顎下腺管のある部分が前上方です。顎下腺を貫く顔面動脈は外上方と内下方に切断部が見られます。

3) 計測と肉眼所見の記載
(1) 腫瘍の数と大きさを測ります。
(2) 断端から最も近い距離を測定します。
(3) 周囲との境界をよく観察します。唾液腺腫瘍の診断には周囲との境界が重要で、不明瞭や不規則な場合は悪性の可能性があります。被膜の有無、および被膜外への腫瘍の広がりの有無を確認します。割面の性状を記載します。良性腫瘍内に癌が発生した場合、黄色の壊死部や赤色の出血部として捉えられることがあるようです。
(4) 唾液腺を越えて軟部組織あるいは神経に浸潤しているか確認します。

4) マーキング

5) サンプリング
(1) 耳鼻科医によって割が入れられていればそれに直交するよう5mm間隔で割をいれます。割が入っていなければ検体を水平断あるいは前額断にします。耳下腺全摘術であれば顔面神経を輪切りにするように前額断で割を入れた方がよいと思われます。
(2) 腫瘍部は少なくとも断端から最も近い部分、周囲との境界が不明瞭/不規則な部分、被膜および被膜外への腫瘍の広がりを含む部分、割面の性状が肉眼的に異なる部分(特に壊死や出血の周辺部)から作製します。ただし、術前・術中診断や肉眼所見が良性であっても組織学的な悪性像が存在することがあるため、全てブロックにすべきとの意見もあります。
(3) 非浸潤性多形腺腫内癌との診断がついていた場合は浸潤を除外するため検体を全て提出します。また、腺様嚢胞癌も神経束に沿って広範囲に進展しますので全て作製したほうがよいと思われます。
(4) 割面にリンパ節が認められたら全て提出します。
(5) 非腫瘍部の唾液腺を作製します。
(6) リンパ節が別に提出されていたら個数を数えます。大唾液腺の癌ではリンパ節転移の程度を表すN分類は転移巣の大きさで分類されます。大きさが3cmをこえるリンパ節は割を入れて、転移を思わせる白色部分があればその長径を測定して下さい。転移の大きさが3cmをこえるとpN2, 6cmをこえるとpN3となります。

悪性腫瘍で切除断端陽性の場合、追加切除や放射線治療が行われることがあります。顔面神経などに神経周囲浸潤が認められたり、高悪性度癌の場合、頚部郭清や放射線治療が追加されることがあります。

 

5. 肉眼像と切り出しの実際

多型腺腫(顎下腺)

ワルチン腫瘍(耳下腺)