2. 胃

1. 胃の解剖

胃は袋状の臓器です。胃の左あるいは右の端で脂肪織が付着している部分を大弯あるいは小弯といいます。小弯に付着した脂肪織を小網、大弯に付着した脂肪織を大網と呼びます。大弯の距離が小弯より長いため、大弯を切って胃を開きます。大弯および小弯の長さを三等分してそれぞれ結ぶことで胃を上部、中部、下部にわけます。粘膜は上部と中部にはひだ(皺襞)がありますが、下部は平坦です。胃の粘膜は淡赤色(固定前)あるいは褐色(固定後)です。胃は割面では粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層からなっています。粘膜は白色、粘膜下層は透明感のある灰色、固有筋層は淡褐色として識別できます。漿膜下層は固有筋層の外の薄い部分です。

2. 胃癌の肉眼的分類

基本分類
0型 表在型: 癌が粘膜下層までにとどまる場合に多く見られる肉眼形態
1型 腫瘤型: 明らかに膨隆した形態を示し周囲粘膜との境界が明瞭なもの
2型 潰瘍限局型: 潰瘍を形成し、潰瘍を取り巻く胃壁が肥厚し周囲粘膜との境界が比較的明瞭な周堤を形成する
3型 潰瘍浸潤型: 潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく胃壁が肥厚し周囲粘膜との境界が不明瞭な周堤を形成する
4型 びまん浸潤型: 著明な潰瘍形成も周堤もなく胃壁の肥厚硬化を特徴とし病巣と周囲粘膜との境界が不明なもの
5型 分類不能: 上記0~4型のいずれにも分類し難いもの

0型(表在型)の亜分類
0-I 隆起型: 明らかな腫瘤状の隆起が認められるもの
0-II 表面型: 隆起や陥凹が軽微なもの、あるいはほとんど認められないもの
0-IIa 表面隆起型: 表面型であるが、低い隆起が認められるもの
0-IIb 表面平坦型: 正常粘膜にみられる凹凸を越える程の隆起陥凹が認められないもの
0-IIc 表面陥凹型: わずかなびらん、または粘膜の浅い陥凹が認められるもの
0-III 陥凹型: 明らかに深い陥凹が認められるもの
(胃癌取扱い規約第14版)

3. 壁深達度(胃壁のどの層まで達しているか)
TX: 癌の浸潤の深さが不明なもの
T0: 癌がない
T1: 癌の局在が粘膜(M)または粘膜下組織(SM)にとどまるもの
T1a: 癌が粘膜にとどまるもの(M)
T1b: 癌の浸潤が粘膜下組織にとどまるもの(SM)
T1b1: SMへの浸潤が粘膜筋板から0.5mm未満のもの
T1b2: SMへの浸潤が粘膜筋板から0.5mm以上のもの
T2: 癌の浸潤が粘膜下組織を超えているが固有筋層にとどまるもの(MP)
T3: 癌の浸潤が固有筋層を越えているが、漿膜下組織にとどまるもの(SS)
T4: 癌の浸潤が漿膜表面に接しているかまたは露出、あるいは他臓器に及ぶもの
T4a: 癌の浸潤が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って遊離腹腔に露出しているもの(SE)
T4b: 癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)
(胃癌取扱い規約第14版)


4. 切り出し

1) 名前とIDの確認
2) オリエンテーション
口側、肛門側、大弯、小弯を確認し、切除検体のオリエンテーションをつけます。申込書にイラストがあれば参考にしましょう。胃癌の手術には胃全摘出術と部分切除術があります。通常は胃の2/3以上と胃の近傍および栄養血管周囲のリンパ節(領域リンパ節と言います)を切除します。膵や肝を合併切除しているようなわかりにくい検体は、必要に応じて提出医に確認しましょう。
3) 計測と肉眼所見の記載
断端と腫瘍を結ぶ最も短い距離を記載します。口側断端との距離は全摘出術の場合は食道、部分切除術の場合は最も近い切除縁との距離を測定します。通常、癌が筋層に達していない場合は2cm以上、筋層に達している場合は限局型で3cm以上、浸潤型で5cm以上離れています。次に腫瘍径を記載します。早期癌で病変の広がりが分かりにくい場合は、0.2%インジゴカルミンを散布するか、提出医に輪郭をインクでマーキングしてもらうとよいでしょう。
漿膜面への露出がないか裏返して確認します。漿膜面は断端ではありません。露出していても必ずしも体内に癌が残っているとは言えません。
4) マーキング
胃の場合マーキングすることはあまりありません。漿膜面の露出を確認する場合や肝や膵の合併切除の断端にマーキングします。
5) サンプリング
(1) 最初に断端を切り取るとコンタミネーションの可能性を低くするとことができます。
(2) 原則として近位側から遠位側断端に至る割を加えて深達度を観察します。進行癌では腫瘍の最深部、早期癌では病巣全てをおおよそ5~7mm間隔で全割し、全てブロックにします。
(3) 非腫瘍部(正常部、発赤や潰瘍)を切出します。
(4) (あれば)リンパ節をブロックにします。通常リンパ節は執刀医により別ビンで提出されます。小網や大網にはリンパ節が含まれており、いずれも執刀医が提出前に切り取りますが、腫瘍が直上にある場合は完全に切り取らないため、リンパ節が残っている場合があります。割面に見られたら提出してください。また、胃癌取扱い規約第14版では、リンパ節構造がなくても胃壁外の脂肪織などに癌巣があれば、リンパ節外の転移であることを記載し、リンパ節転移としてカウントすることになっていますので、提出して下さい。別ビンにリンパ節(通常、1~20、110~112の番号がついています)が提出されていた場合は個数を数えてください。領域リンパ節(原則的に1~12, 14v)への転移の程度を分類するには最低16個必要です。領域リンパ節以外のリンパ節への転移は遠隔転移(M1)となります。

リンパ節転移があったり、漿膜面を越えていたりすると化学療法が検討されます。断端に腫瘍が認められると化学療法が考慮されることがあるようです。

5. 肉眼像と切り出しの実際

早期癌(0-Ⅰ隆起型)


早期癌(0-Ⅱ 表面型)

進行癌(3型)